常なるものと常ならざるもの~ハンゲショウ、大雪、東日本大震災

ハンゲショウの写真

半夏生の写真平成23年念佛寺盆施餓鬼会にようこそご参詣いただきありがとうございます。昨年は「へそくりのすすめ」というお話をさせていただきました。カラスビシャクという植物の球根の部分がハンゲという漢方にもなるとか、花の部分が仏炎苞の形になっているところから阿弥陀仏の光背についてもお話ししたところです。
昨年に続いてというわけでもありませんが、この写真をご覧ください。ハンゲショウという植物です。夏至から数えて11日目、7月2日ごろを「半夏生(はんげしょう)」といいます。カラスビシャクが生えるころとか、この半夏生の草の葉っぱが半分白くなるころとも言われます。今年7月3日の朝見ると、写真のように葉っぱが白くなり始めていました。自然は植物をいつもと同じように育てています。いつも同じようになることを「自然だ」とか「自然になる」といういい方もしますね。自然の力です。</p>
<p>ところが今年は自然が「いつもではない、いつもとは違う」こともあることを私たちに改めて教えてくれました。「常でない」つまり「異常」な状態を教えてくれました。年末から年始にかけての大雪、融かすことを忘れ毎日のように降りました。さらに3月11日には東日本大震災。マグニチュード9.0、10m以上の津波が押し寄せ、遡上高40.5m、1万5千人を超える人が亡くなり、未だに行方不明者4500人以上もあります。死者の中には遺体もないけれども目の前で波にのまれたからと死亡届を出した人もかなりにのぼるそうです。逃げ惑う人々の映像を見ながら人間の無力さをまざまざと見せつけられました。</p>
<p>さらに東京電力福島第一原子力発電所では原子炉を冷却できなくなり放射性物質の放出を伴う重大な原子力事故に発展して未だに収束できていません。原子力発電でウランの核分裂から生じるセシウム137という放射性物質が半減期、つまり半分に減るのに要する時間、を迎えるのに30年かかるそうです。セシウムに汚染された空気や飲食物を摂取することで体内に取り込まれていきます。セシウムはガンマ線の強い発生源となるために、使用後は数年から数百年間の冷却を必要とするとも言われています。今から25年前の1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故では今も原子力発電所全体をコンクリートで覆っているそうです。しかし放射能が出ているために人が丁寧にコンクリート覆いをすることもできず、亀裂から雨水が流れ込み放射能汚染も拡大しているという状況のようです。今後福島県はいや日本はどう収束してゆくのでしょうか?</p>
<p>人間がつくりだしたものではあるけれども、人間の手ではコントロールできない状態になっているわけです。私たちの命も私たちのものであるように思っていますが、私たち自身で普通にはコントロールできません。つい先程まで元気だった人が一瞬のうちに亡くなってしまう、これも自然なのです。あるものは常にあるのではない。「無常」なのです。無常で苦に満ちている世の中を少しでも楽な気持で生活できるように、さまざまな宗教が生まれ、仏教が生まれ、浄土宗が生まれてきているのです。</p>
<p>南無阿弥陀佛の一声の中に極楽往生を確かにする力があるとお経の中に説かれています。不確かな世の中で信じることの確かさを胸に抱いて、これからも南無阿弥陀佛の念仏を称えていきたいものです。</p>
<p>最後に皆さん方ともう10回の念仏を称えて、先祖の供養、東日本大震災で被災された方々の霊を弔いながら念佛寺施餓鬼法要を終えたいと思います。御唱和ください。</p>
<p>如来大慈悲哀愍護念。同唱十念。</p>