お別れする人には花の名前を教えておきなさいって。花は毎年、必ず咲くからっ て。有川浩 #book #dokusyo

有川浩『三匹のおっさん ふたたび』の最後に収められている『好きだよと言えずに初恋は、』の中から。

<<<<<< 「渡し忘れたっていうより、教え損ねた。花の名前。何で教えたかったかっていうと・・・・・」 彼は少し言い淀んでから顔を上げた。 「うちのお母さんが、お別れする人には花の名前を教えておきなさいって。花は毎年、必ず咲くからって」 まっすぐに静かな眼差しを向けられて、心臓が早鐘のように鳴った。 割れそうだ。 ・・・・ (女子高に入ってから) 現国の教科書に、川端康成の『雪国』が一部抜粋で載っていた。 教師はウンチク好きで、筆者の略歴を説明するとき小話をあれこれ付け足した。 その小ネタの中に、川端康成の言葉があった。 別れる男に花の名前を一つ教えておきなさい。花は必ず毎年咲きます。 不意に苦くて甘い思い出が蘇った。 小学校の卒業間際、転校が決まっていた潤子にちっぽけな花の名前をいくつも教えた男の子。 教科書の文字か滲んだ。ページの上でパタパタと水が弾けた。 >>>>>>>

花の名前を教えることで、その花を教えた自分を思い出してもらいたい、思い出させたい、ということだろう。
まさに潤子は思い出した。好きな人だったから一生懸命に教えてくれたんだということに改めて気づいた。

いじめられている生徒がいても、周りを気にせずいじめられている生徒に関わろうとする生徒がいてくれると、いじめもなくなるのだろうに。

気づけば謝るのを憚ることはない。有川浩 #book #dokusyo

有川浩『三匹のおっさん ふたたび』2012/3/30初版。2012/4/15第3刷。文藝春秋

<<<<<<<<<< 「優雅だな、とか俺いらんこと言っちゃって。そっちは土日も働いてるんだもんな。後で貴子に話したら怒られちゃって」 悪気なく大雑把だが、気づけば謝るのを憚ることはない。そういう性格だ。 >>>>>>>>>>

健児の話を聞いて怒る妻貴子、貴子の言葉を素直に聞き、年下の康生に謝る健児、こういう人たちと関係の持てる康生。
みんなで幸せの輪を広げて確かなものにしてる。こうありたいですね。

心ない自分、心にかかるトゲ。有川浩 #book #dokusyo

有川浩『三匹のおっさん ふたたび』の一節。

<<<<<<< 自分もかつてそんなふうに慈しまれていたことが改めて思い返される。 そのたびに幼い日の心ない自分が立ち上がってきて自分を責める。それは、子供だったからと逃げを打つことが許されないような気がする心にかかるトゲだった。 >>>>>>>

自分の子供をあやしてくれている父親の姿から、自分が子供の頃そうだったということを改めて思い起こし、父親に反発したことを、心にかかるトゲと言っているのだろう。子供だからと今は逃げることもできなくなった。
このトゲはどうやったら抜けるのだろうか?抜いたあとしばらくは化膿するのだろうか?
この先が楽しみだ。

私の両親はもういなくなってしまったが、お盆を前にして心のトゲを一つでも抜いていきたいものだ。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。