1	山中一揆倉敷公民館　第4回　人＋人学岡山の一揆シリーズ（４）平成26年10月21日（火）新庄宿・念佛寺　田中寛一
2	真庭と倉敷市
3	山中一揆い　　つ：享保１１（1726）年１２月３日どこで：津山藩の真島・大庭の両郡だれが：農民たちだれに：津山藩、大庄屋・中庄屋なにを：年貢の減免、民主的な政治な　　ぜ：生活を守るためどんなに：一揆として「蜂起」どれだけ：３～４,０００人。３か月間
4	享保時代・・・テレビでは「暴れん坊将軍」1978～2002年まで832回８代将軍・徳川吉宗が「徳田新之助」として町火消「め組」に居候「余の顔を見忘れたか」吉宗は「米将軍」とも。「大岡越前」江戸南町奉行所与力・大岡越前守忠相その他の時代「水戸黄門」…水戸藩主・徳川光圀。 3代家光、4代家綱、5代綱吉の時代。国史編纂（『大日本史』）時代劇定番。映画80余本「この紋所が目に入らぬか」テレビ１９６９年～２０１１年の１２２７回まで「遠山の金さん」１８４０～４３（天保）江戸北町奉行所・遠山左衛門尉。「江戸を斬る」。この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろぃ！」
5	吉宗の享保の改革（1716享保元年～） ’17 新金銀交換・米増産→米価下落 ’19 相対済令･･･金銭問題は当事者間で解決を ’20 町火消･･･いろは四十八組 ’21 目安箱 ’22 足高の制･･･元の禄高に役職に応じた禄を足して支給。能力者登用。大岡忠相(1700石の旗本4男→3,000石町奉行） ’22 上げ米の制･･･1万石につき100石の献上米。参勤交代の江戸在府期間を1年間から半年に緩和。 ’22 検見法から定免法へ･･･凶作でも一定額の徴収。 ’22 小石川養生所･･･貧民救済医療施設。建設費210両。経常費約300両 ’26 山中一揆
6	その後の享保の改革 ’28 五公五民制･･･四公六民からの引き上げ ’30 買米令･･･幕府「かいまい」、諸藩や江戸・大阪の有力商人「かわせまい」に米を買い上げ貯蔵させて米価の引き上げを促す ’36 再度の改鋳 ’42 公事方御定書･･･基本法令と刑事法令
7	津山・森藩１６０３年～　18万6500石初代・忠政　1603（慶長8）年　18万6500石　津山城２代・長継　1634（寛永11）年～　新田開発・藩制整備３代・長武（ながたけ）1674（寛永11）～ ’74 惣村支配強化･･･隠し田畑の摘発４代・長成（ながなり）1685（貞享2）～ ’85 簡略を命ず･･･衣類は紬・木綿のほか禁止 ’95 江戸御伝普請として「犬小屋の建設」の命 42,570両、米289石。5代将軍綱吉の「生類憐みの令」 ’97（元禄10）石高25万9300石に増加･･･長成、27歳で病死 ’97 ２代･長継の9男衆利（あつとし）が24歳で継ぐが、江戸参勤途中で乱心、幕府批判で断絶（同年8月2日改易）→天領に。長継は、’97備中･西江原藩（井原市）で2万石で再興。10年間。
8	森家津山藩の領地
9	美作の中の真庭（真島郡・大庭郡）
10	真島郡と大庭郡旭川の西（南）真島郡旭川の東（北）大庭郡 1900年（明治33）合併して真庭郡 2005.3.31 真庭郡新庄村真庭市（新庄以外の真庭郡と上房郡北房町）
11	森家津山藩断絶後の美作
12	津山・松平藩1698（元禄１１年）～初代・松平長矩（ながのり､家康のひ孫、宣富（のぶとみ）とも）陸奥白河藩主の子、のち越後髙田藩の養嗣子から 1月、１０万石を与えられ、津山藩主に。 5月、津山城明け渡し完了人材を積極的に登用･･･越後、森家遺臣、江戸・京洛年貢を高く設定（六公四民）→’98高倉騒動･･･８人斬罪　（幕府が四公六民から五公五民に引き上げたのが1728年）領内の大庄屋２０人に。年俸米１５石。 ’98.9月江戸藩邸全焼（元禄江戸大火。江戸で3000人以上の死者）。のち再建。１７１７年、大庄屋に苗字・帯刀・騎馬を許す ’21（享保6年2月7日）死去42歳。
13	松平家津山藩10万石　元禄11（1698）～
14	松平家津山藩　　　と天領時代元禄11.1～享保12.5 　　（1698～1727年）
15	松平津山藩の大庄屋とその範囲（触）天領の代官所（1726年当時）
16	高倉騒動（元禄一揆）　1698元禄11年初代津山松平藩主が8月に年貢免状（納税告知書）を下付農民の嘆願六公四民の新税率を前年の幕府領並みの五公五民に口米（付加税）石当たり３升の廃止を小物成（雑税）は森時代の仕法にもどす１１月、城下に５００人の農民終結高倉村大庄屋は農民側で代弁藩は嘆願書を受取、幕領並みの年貢を約束強訴指導者８名（２名は庄屋）を捕え、斬罪。うち３名は獄門。家族は入牢、居所追放。翌年、年貢は六公四民。欺かれた！
17	たび重なる自然災害　初代・長矩の時期 1701(元禄14）大ひょうが降り、麦作凶作 ’02 美作･備前･備中、暴風雨・洪水・高潮。津山藩内倒壊・流出家屋520戸 ’08(宝永5) 10数ｇの大ひょう。麦作・春野菜が皆無に ’10 美作地域に大地震。死者多数。 ’13(正徳3) 9月12日(今の10月30日）大雪。津山にも薄雪、山中積雪多く、小童谷・黒田など庭雪60cm、鉄山・粟谷など庭雪70cm、新庄など75cm、雪の下になった稲も。※ ’16（享保元）美作に大飢饉。飢民1.2万人。城下・久世に救護所。麦・塩を給与 ’18 大霜、畑作・稻苗を傷める。田植え満足にできず。 ’20 干害6～7月､多雨8月､霜害9月｡大凶作｡10月嘆願に
18	さらなる災害　2代・浅五郎の時期 1721(享保6) 前年の干害・早冷えで、草の根、木の実で命をつなぐ百姓。閏7月15日(現9月6日）洪水。新庄～勝山の橋全て流出。交通不能に。8月20日(現10月10日)大雨。　両度の風水、田畑の被害大。 ’22(享保7) 春、飢え。湯本触2,548人飢え、川上村内半数の1068人飢え。 ’24(享保９）9月8日(現10月 24日) 津山地方に大雨、洪水。16000石余の被害。潰家185、半潰家773、倒木3874本、と幕府へ届け ’25(享保10）美作では5月末～8月初まで雨の無い大干ばつ。津山川・加茂川等枯渇。美作の天領で定免制施行に反対の強訴が起きる ’26(享保11）干害-7～8月少しも雨が降らない ’26(享保11）山中一揆がおこる
19	津山藩の財政【森家】　１６０３年～ <初代・忠政>津山城１２年間、京都御所造営、江戸城石垣普請、大坂の陣 <２代・長継>城下整備、人口調査、国絵図作成、衆楽園造営 <４代・長成>江戸に犬小屋建設（１２万余坪、４０万㎡。犬小屋289棟、餌会所・番所など164棟、人件費3万石、 42,570両。）倉敷市営球場の20個分！の面積【松平家】度重なる江戸藩邸の火事 <初代・長矩（ながのり）>元禄11年～元禄11（1698）年9月6日　柳原屋敷焼失（江戸で死者3,000人）幕府より鍛冶橋門内に7000坪の敷地と金１万両を拝す宝永2（1705）年11月15日　鍛冶橋屋敷類焼正徳6（1716）年1月1日　鍛冶橋屋敷類焼享保2（1717）年1月22日　鍛冶橋屋敷類焼 <２代・浅五郎>享保６（1721）年～ <３代・長熙（ながひろ）> 享保16（1731）年4月15日　桜田中屋敷類焼など明治までに13回の焼失・類焼を受けている。
20	２代・松平浅五郎江戸藩邸の度重なる焼失のあと１７２１（享保６）年、６歳で２代目藩主に。 ‘２６（享保１１年）11月11日、享年１１で早世お家断絶、改易のところ、家系により従兄の後継が認められる。 ‘２６～’27 （享保11～12）山中一揆おこる３代・長熙(ながひろ) 1727～ ’27　罰則として、１０万石から５万石へ半減。５万石の天領は久世の代官所が支配以降、幕府での待遇、官位も冷遇 ’35（享保20年10月13日） 16歳で死去。 7代・斉孝（なりたか）は文化14年（1817）、第１１代将軍・徳川家斉の十四男・銀之助（後の斉民（なりたみ））を養嗣子に。⇒10万石に復帰し、官位も復する。
21	山中一揆後、津山藩は5万石に
22	百姓一揆の推移
23	一揆の多発国と中国地方
24	中国地方の各国の一揆発生表
25	中国地方の各国の一揆発生グラフ
26	山中一揆（1726～27）前の一揆蜂起は、元禄・正徳期（1680～1719）全国でわずか３件慶長・寛永期（1590～1639）に２５件。慶安～延宝（1640～1679）は０件享保期以後に５０件 1717年（享保2）備後一揆（蜂起） 6千人の農民が結集（11月）平年の半分以下の収穫で減免を要望福山城下を包囲（享保3年1月）福山藩は要求受け入れ、指導者も詮議なし。２千石を免除。 1718年（享保３年）安芸国で２件広島藩の「正徳新格」に対し25条の願書。一旦認め、一揆鎮静のひと月後、首謀者49名が斬首・獄門に
27	山中一揆のきっかけ凶作続き犬小屋建設、江戸屋敷の数度の火事など、藩財政が苦しく、農民に重い負担をかけてきた。領主浅五郎の明日をも知れぬ病弱・・・藩断絶か? 領主存命中に、年貢米を確保しようと納期を早めた例年１１月２５日をこの年は１０月１５日に領主浅五郎の11歳での死去・・・１１月１１日大庄屋・中庄屋らが自分らの取り分を勝手に持ち出そうとした。勘定奉行久保新平が、領地が半減される前に、納めさせていた年貢米を売りさばこうと船積みし始めた。
28	山中一揆の農民側の要求 ①年貢の未納分の１４％（相残る壱歩四厘未納）は納入を免除すること ②四歩加免(４割増徴)は免除すること ※｢岡山県大百科事典」=4割。「徳川社会のゆらぎ」（倉地克直著、小学館）では４％ ③大庄屋から借りて払った年貢米を免除すること ④米以外のいろいろな名目の税金(諸運上金)を廃止すること・・・口米などの付加米・山年貢銀・鉄砲運上・大豆年貢などの増徴 ⑤藩が任命する大庄屋・村庄屋を廃止して，農民が選んだ状着(農民代表)を置くこと ⑥大庄屋・中庄屋・村庄屋に与えられた特別の権益を廃止し，諸帳簿を農民に渡すこと農民側と藩代表者との数日の交渉の結果，農民側は，④を除いて，ほとんどの要求を勝ち取る。
29	山中一揆のおもな経過享保11年11月11日　藩主浅五郎の死去大庄屋・中庄屋、藩による年貢米を持ち出す動き「12月3日に久世に集結」の天狗状が回る（1726.12.25） 3～4,000人が久世に集結（山中三触の３～４人に１人、１戸に１～２人が結集）農民が６項目を要求（１２月５日、1726.12.27）年貢米の返還要求行動（打ちこわし等）米切手を現物に換える行動藩による武力鎮圧・・・新庄から始まった処刑（正月１２日、1727.2.2）指導者の逮捕津山への護送、引き回し、磔などの処刑（３月１２日、1727.5.2）詫び証文を取られ、認められたのは四歩加免の免除のみ｢山中一揆の経過」は下記サイトに詳細を載せています http://www.can-chan.com/sanchuikki/santyuikki-koyomi.html
30	富山藩の売薬地図富山反魂丹（はんごんたん）
31	神社参詣伊勢参り（日本の歴史11『徳川社会のゆらぎ』倉地克直著、小学館）御蔭参りの始まり＝伊勢大神宮が近江国の膳所（ぜぜ）に飛来。民衆が押し寄せる。慶長19（1614）伊勢踊りが流行御蔭参りの記録＞寛永15（1638）、慶安3（1650）、寛文元（1661）、宝永2（1705）50日間で360万人超、享保3（1717）、明和8（1771）、文政3（1830）。慶応3（1867）は「ええじゃないか」乱舞。御蔭参りは無届の抜け参り出雲大社詣り伊勢参りに対して『奥詣り』として出雲大社へ大山寺参り鎌倉・室町時代は比叡山・高野山に並ぶ大寺。僧兵3000人。農耕神、牛馬の守護神の地蔵菩薩。雨乞いで赤松池にもらい水
32	大山（『岸本町史』より）博労座日本三大牛馬市の一つ（福島の白川馬市、広島久井の牛市）大山博労座の繁盛は、平安末期、大山寺の地蔵菩薩の守護札を広める隠岐、出雲、岡山、広島、近畿から牛馬を連れて大山寺へ高梁で藩営市が寛永年間（1624～43）に開かれる。（「大山みち」より）東牛（岡山・美作、鳥取→近畿へ）、西牛（備前・備中→広島・島根へ）富くじ元禄５（1692）禁止。領内で盛んだった宝暦２（1752）には富興行御免となる。（『岸本町史』）大山寺領天台宗末寺。幕府の厚い保護。14～18か村3000石で明治まで。鳥取藩より60年遅れて定免制に（宝暦7年、1757）寛文10（1670）大山騒動。年貢のいざこざ享保２（1717）百姓一揆。凶作で藩領内の一揆続発が大山寺領にも。農民に救済米で鎮静化。
33	タタラ製鉄と炭焼き元禄４年（1691）の『作陽誌』に　「元和年中（1615～1624）に、津山の人が鉄山村、粟谷村・種村・黒杭村（以上湯原町、美甘村鉄山と山を隔てているが隣村になる）、西茅部村（川上村）で鉄を掘る」と「砂鉄七里に炭三里」・・・調達範囲一代（ひとよ）3～4昼夜で、砂鉄１２ｔ、木炭１２ｔ使用し、ケラ2.8ｔ（日本刀になる玉鋼１ｔ弱。包丁などになるズクが2トン）砂鉄１２ｔに母岩１２００t以上必要木炭１２t（3,000貫）に森林面積１ｈａ必要。樹齢30年以上。12tの炭をつくるため生木はその４倍以上の約５０ｔが必要
34	たたらと木炭播磨・但馬・美作・因幡・伯耆・備中・備後・出雲・石見・安芸等で全国の約６割以上の鉄を生産ー明治中ごろまで花崗岩中の砂鉄豊富な木炭資源ーなら・くぬぎ・くり・かし１回の製炭量ー250～500俵（１俵15kg。3.75ｔ~7.5ｔ）,製炭日数８日、消火冷却に５～６日。　　　　（『鉄山秘書』1784年）。川上村史ー1707(宝永4)に鈩１軒、鍛冶屋２軒の記録百姓共有林を年銀３００目(金５両？)で鉄山師が買う木炭山の確保ー鈩用の大炭、鍛冶用の小炭用僻地の山が有益に機能ー窮迫する農村経済を潤す村年貢米の内３０石分を鉄山師が銀５００目で買う２月と１０月の２期に分けて村方へ分納山内労働者の飯米の一部農民は年貢輸送軽減、悪米の処理山代銀300目、使用馬飼料代銀300目を村方へ上斎原村で年貢米６～８割が鉄山為替米量に
35	近世の鉄山
36	たたら山内の労働者
37	徳山家経営のタタラ
38	湯原温泉慶長7（1612）播磨の人、藩主森忠政より温泉開発の許可を得る。元禄3年の「定」に、武士・住職・家来のいる町医者は「一の湯」、医師・大庄屋や富裕者は「二の湯」と。寛政4年には広島藩の頼春水（頼山陽の父）が備後から湯原までの里程図を書いてもらっている。出雲大社詣り、伊勢参りの途中に寄る人大山の牛馬市への途中に寄る人
39	江戸時代の往来と大山みち
40	山中一揆を実現させたのは山中の人のつながり・・・集団の力たたら(鉄づくり)による共同作業・・・鉄集団と農民とのつながり・砂鉄採りー鉄穴流し、・木炭づくり、・砂鉄・木炭の運搬ー牛馬、・食事等の世話木地師・・・「たたらに木地はつきもの」。樹種が異なる。藩に納める器物近江国小椋庄の氏子駈帳に田羽根・湯本・粟谷からの寄進名簿（半六ほか）田羽根村にはピーク時の元禄7年（1694）、木地師25軒・80人（村人約270人）西茅部村郷原には享保12（1727）には43名（1647年10人、1707年36人、1720年16人）「川上村史」ー木地師は1707年の西茅部村郷原36人、下徳山村明連24人の合計で60人（最高）情報の交流・・・藩政・幕政の違い・一揆伊勢・出雲・大山・湯原温泉出雲街道・大山みち・旭川などの水運商工業・・・山中一揆中には大阪の商人に詳細が伝わっていたように他所の情報も入っていたのでは。
41	山中一揆処刑の場所と人数
42	山中一揆の処刑者数
43	犠牲者最大の西茅部村は
44	山中一揆史跡を地図で辿るー全県
45	山中一揆史跡を地図で辿る―美作
46	山中地図と道
47	山中一揆史跡(一部)
48	山中一揆後の大規模一揆
49	六十六部廻国碑（新庄村今井河原近く）碑の中の文字は「六十六部日本回国清甚塚享保十三年申正月念五日」享保13年正月25日の一年前には、湯本下河原で8名が処刑され、新庄村の４人目の犠牲者。一周忌を弔ったのだろうか？一揆最初の犠牲者　　享保12年正月12日、今井河原で新庄村3名、田口村2名が処刑される
50	おわりに死を覚悟しながらも連帯し、子孫や地域のために立ち上がった人々がいた民衆の力とともに幕藩体制の限界を示した全国的にも大きな一揆であった四歩加免免除のみの達成だったが、約290年前のことが語り継がれてきている一揆指導者たちの命は失われたが、「義民」として伝承され現代人の心の中に「生きている」。倉敷の地でも。岡山県北の山の中だが、いろんな地域の多くの人々との交流がある地域でもあった。人と人とのつながりの中で、私たちはよりよく生きていくことができる