念佛寺施餓鬼会に皆さんようこそお参りくださいました。毎日本当に暑い日が続いています。

台風10号が四国中国地方を通過したばかりの今日の施餓鬼です。一昨日の新庄の花火大会、盆踊り大会も中止され、昨日の大雨もあり、本日の施餓鬼会開催を少し心配しておりましたが、なんとか開催でき安堵としております。お集まりいただいた皆様方に感謝申し上げます。被害などはなかったでしょうか。

本日は「汗と涙と南無阿弥陀佛~海より深い父母の恩」というテーマで話させていただきます。

私は毎朝、NHKの朝ドラ「なつぞら」を見ています。ときに主演の広瀬すずさんやその母親役の松嶋菜々子さんが大粒の涙を流すシーンもあり,私も思わずもらい泣きしてしまいます。 天寿を全うされた方、あるいは若くして亡くなられた方、いずれにしても遺族の涙の中で住職として法要の勤めをなすことの辛さも感じております。

さて、今年も7月末からの猛暑で熱中症のニュースが毎日のようにありました。こまめに水分と塩分の補給をしてくださいと報じられていました。汗の中に塩分が含まれているからです。手に汗握り、額に汗し、汗水たらして働き努力し、血と汗の結晶として何かを作り出しているのが私達です。私も法要中の汗に続き、皆さんの前でこうして話をさせていただきながら実は、緊張して冷や汗もかいています。その汗の99%は水分なのですが、残り1%は塩分だそうです。 太古の昔、地球が誕生し、そのうち海の中から生物が誕生していきます。やがて陸に上がる生き物も現れ、さらにずっと後になって私たち人間の先祖が出現していくのです。地球の表面積の7割が海というのと似ているようで、私たちの体も6,7割が水分であり、その中に塩分が含まれているというのも、先祖が海にいたことと関係するのでしょうか。

海の波は1分間に約18回押し寄せているそうです。これは私たちの1分間の呼吸の数、さらにはまばたきの数とほぼ同じだそうです。この数を何倍かすると、体温(36.5度)、脈拍(72)、血圧(~144)、出産まで日数(288日)など、海と人間とのつながりが感じられます。 辛いこと、悲しいときの涙だけでなく、私たちの目はまばたきすることで常に涙で潤されています。 眼に流れるすべての涙を1年間集めると250cc、このペットボトルくらいに貯まるそうです。涙にも2%ほどの塩分が含まれています。この袋をご覧ください。塩です。私の体の中の塩を抜き出すとこれほど(約225g)になります。3%の塩分を含む海水にはおよびませんが、私たち人間の体の中に塩分を含んでいるのです(体重の約0.3%の塩分を含んでおり、体重60kgなら200gの塩ということになります)。その塩分は骨を中心に細胞や細胞の間、血液の中にあり、汗や涙として出ていきます。

この写真をご覧ください。亀の頭に蝶が止まっています。これは南アメリカ大陸のアマゾン川を海から1600kmほどさかのぼったところの様子です。亀の涙を蝶が吸っているところです。亀は肉食でもあるので塩分などミネラルを摂取することができるのですが、蝶は塩分を摂ることができません。それでちゃっかり亀の涙から塩分をおすそ分けしていただいているのです。中にはワニの目から塩分をいただく強者の蝶もいます。命がけです。塩分を摂らないと命を落とすのですから、どちらにしても命がけです。

みなさんもご存知とは思いますが、新庄村の田浪にはウスイロヒョウモンモドキという絶滅危惧種の蝶がいてその保全活動が行われています。谷田の奥にもいたという話も聞きます。たくさんいたときは田浪のキャンプ場にも降りてきて人の服や腕や手などにも止まり人懐っこい蝶という印象があったそうです。牛の糞尿の上にも止まったりもしていたということです。アマゾンの亀と蝶の関係を知ったことで、ウスイロヒョウモンモドキが人へ接触していたのは、ともに塩分を摂取しようとする共通の行為だったのかもしれません。

ウスイロヒョウモンモドキのことは自然保護会員から聞きました。アマゾン川の亀と蝶のことは小説(小川洋子・堀江敏幸「あとは切手を、一枚貼るだけ」中央公論社2019.6.18発行)を読みながら知り、インターネット(Butterflies Drinking Tears From Turtle And Alligator Eyes Look Like A Scene From Disney)でこのような写真に出会えました。

観無量寿経というお経の中には、「無量寿佛の眼は四大海水(4つの大きな海)の如し」というふうに描かれています。それほど大きな眼なら常に潤すのにどれだけの涙が流れ、ひとつぶの涙がどれほどか、みなさんの中には計算仕掛けた人もいるかも知れません。ここではそれほど大きな無量寿佛、阿彌陀佛でいらっしゃるけれども、私たちが心にみ仏を想い描くとき、私たちの心のなかに仏様がすっぽり入りことです。この心はそのまま仏さまなのです。「父母の恩は山よりも高く海よりも深い」ともいいます。亀と蝶とが塩という生命に必要なミネラルをやり取りし、私たちが父母から手塩にかけて育てられたように、私たちも阿弥陀佛の慈しみの心の慈悲を受け、私たちが心に仏を思い描き、「南無阿弥陀佛」と口に唱えるという関係を持ちつづけようではありませんか。そのことにより、阿彌陀佛も生かされ、私たちもこの世、そして次の極楽浄土の世で行き続けていくことができますように祈りましょう。

以上で本日の施餓鬼会の法話とさせていただき、最後に十念を唱えて終わりとしたいと思います。それでは皆様、両手を合わせて合掌してご唱和ください。

如来大慈悲哀愍護念、同称十念。(約10分)